古田十駕(酒盛正)の文学日記

古田十駕の文学日記

2021年6月27日 身辺些事の神変。

 二百二十三枚。読んでいた資料が何冊かバタバタと読み終わって、今読んでいるのは読み物として読んでいる「今昔」一冊だけになった。するとい昨日あたりから書くほうのペースがちょっと戻った。やはり資料の読み込みが多少負担になっていたらしい。数十年つかっている眼鏡が去年あたりから合わなくなってきていて、今年中に新しいのをつくろうと思っているところ。身辺の些事も少しずつ変わっていく。

 

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 釈迦牟尼(サキャ族の聖者)、仏陀(真理を悟る者)と呼ばれるゴータマ・シッダールタは、どのようにして現象としてのこの世の真の姿をとらえ、苦からの解脱という方途を見出したか。その大悟までの半生を描く。
   100円(税込み)

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ユダヤ教から卵生したキリスト教を、ユダヤ主義者や異教徒と厳しく対決しながらローマ帝国に教線をひろげていった聖パウロを中心に、新約聖書記述者のルカやマルコをはじめとする伝道者たちの信仰を描く。
   280円(税込み)

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明治二十三年春三十九歳で来日し、五十九歳で亡くなるまで日本を離れず、「知られざる日本の面影」「霊の日本」「神國日本」などをあらわして日本を西欧に紹介した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の評伝小説。
    100円(税込み)

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僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
近代日本の芸術における過剰な商業主義への光太郎の生真面目な抗議は、
美しい日本の良心と言えるだろう。
日本近代詩の父、高村光太郎の生涯!
   280円(税込み)

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酒盛正全詩集
作品No.1より
雨。かってこれほど充実した一日はなかった。夕闇と
ともに空は明るみ、疲労が私を襲った。野の道の地蔵の
前に私は屈みこみ、しきりに自由とか孤独とかいうことを
考えた。濡れた雨傘は鉄鉢を持つ地蔵の腕にたてかけて
あった。夜が迫りつつあった。
   100円(税込み)

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かく歩み、かく思い、かく書く。文学日記より拾った鳥道の粋藻。小説が生まれる前の素描。文学日記セレクション
   240円(税込み)

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2021年6月25日 一日々々が書くという行為の紐でつながっている。つなげているのか。

 二百二十一枚。「法華義疏」読み終える。書くほうは崇峻三年の春から秋にかけてを書いていて、この冬に山に入って法興寺造立に遣う木を伐り出すところで五章の三分の一を終える。物部守屋誅殺から崇峻暗殺までの数年の短い平和な期間を書くのが、戦争や政争を書くよりむずかしい。厩戸王がみずから口を利き出すまで今のペースが続くかも知れない。一日々々老いていく身には辛い。

 

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作品No.1より
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2021年6月23日 輪廻は実存の夢。

 二百二十枚。今書いている作品のために読み出して毎晩トイレのときに少しずつ読んでいた「法華義疏」があとふた夜で読み終わる。これで聖徳太子があらわしたとされる三経義疏をいちおう読みとおしたことになる。聖徳太子の仏教理解がどのようなものだったかを知らなければ彼のことは書けず、そのもっとも端的かつ最善の方途が三経義疏を読むことなのは自明に思われたので、書き出す前から他の資料に先立って読み始め、ようやく読み終える。あとふた夜が仄かに光っているように思える。書いている小説の中で聖徳太子は十七歳になったところで、本格的に仏教を学ぶのはこれからだから、何とか間に合った。

 

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2021年6月21日 小説の大事は実存というラグランジュポイントにある。

 二百十九枚。百済で大戒をうけて帰朝した善信尼らが入って桜井道場が桜井寺になる。善信尼が十七歳、厩戸王も十七歳なので、その若い力のようなところをもう少し書けないかと昨日午後二時間ほど頑張るもおもうようにはいかず。今日も少し頑張ってみることにする。歳をとると若い人のことを書くのが苦手になる。情景描写やちょっとした仕草などもあえては書かないようになる。その結果、文章は簡潔になるが、小説はつまらなくなる。大事なことは大事なことだけ書いても表現できない。そもそも小説の大事は事物、事態の大事とは異なる。

 

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2021年6月19日 精神という肉体の虚空

 二百十八枚。厩戸王が、飛鳥寺を建てる準備を始めている馬子へ、物部守屋誅討のときに誓約した護世四王のための寺塔の造立を建てることに協力を求め、馬子が、大寺を二つ同時に建てるのは無理なので、取り敢えず、討伐した物部守屋らの供養の小堂を難波の守屋の別業の跡地に建てるようすすめるところまで書く。今日は二年前に百済へわたった善信尼らが帰国するところまで書く。このところ一日半枚のペース。これ以下になると匍匐。

 

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2021年6月17日 奇様奇態も世の常

 挿入を書いたが、ほぼそれと同じ分量、他の箇所を削って枚数は増えなかった。去年の九月から書き始めてまだ二百枚ちょっと。毎日少しずつ書くのも気骨が折れる。小説というのは奇妙な存在価値によって世にあって、その小説を書く人間というのはもっと奇妙な存在かも知れない。自分で言うのも何だが何やら変態の臭いがする。自分の精神性に殉死するというのはたしかに一種の変態で、それを客観視するのもかなり重症の変態だろうという気がする。

 

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2021年6月15日 虚構のクオリティ

 二百十七枚。飛鳥のころは日本にはまだ紙がなかったので、建築にあたっては設計図のようなものはなかったため、大規模建築でも左右対称や単純なパターンを繰り返す様式だったのではないかと思われる。それを承知で、飛鳥寺の建築にあたって馬子が百済からきた寺工と設計図を挟んであれこれ相談する場面を書いてみた。朝鮮半島ではそのころすでに紙をつくっていたので、その紙の製法を寺工たちが見よう見まねでつくったということにした。馬子が経の書写につかいたいのでその紙の製法を教えて欲しいと頼むところまで書く。史実ではないがありそうなことで、そうだったとしても決しておかしくない。聖徳太子がこのあと「法華義疏」をあらわすので、そのときの下書きやら何やらにつかわれる紙も要る。木簡や竹簡ではとても間に合わない。だからそのころに紙の製法がつたわったのはほぼ間違いないので、どこの誰が最初に日本で紙をつくったとはっきりしない以上、まんざら出鱈目ではないことになり、半島の国使がもたらした紙の製法によって大和で最初に紙がつくられた蓋然性はかなり高い。歴史小説に差し挟む虚構のクオリティとしてはじゅうぶんに思える。

 

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