古田十駕(酒盛正)の文学日記

古田十駕の文学日記

2021年7月11日 何かしら危うき目に遭う夏の夢

 二百三十二枚。ごろた石だらけの道を歩いているような感じで捗らない。しかし、昔の田舎の道もこんなだったとおもえば逆に慣れた道だという気もする。こういう道では学校で喧嘩をした他の村の連中が待ち伏せていたり、うっかり蛇を踏みつけたり、通りがかった車のタイヤに弾かれた石が飛んできたりするので油断できないが、道は道で、ちゃんと目的地に通じている。そのデコボコにも理があって、それから教えられることも多々ある。とは言え、文学の道と田舎の道は比喩として相似しない部分もある。つまり、文学の道は目的地に通じているかどうかわからない。どこに通じているのかもわからない。青い日射しよりないこの道がどこへ続くのかと不安でもある。

 

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 釈迦牟尼(サキャ族の聖者)、仏陀(真理を悟る者)と呼ばれるゴータマ・シッダールタは、どのようにして現象としてのこの世の真の姿をとらえ、苦からの解脱という方途を見出したか。その大悟までの半生を描く。
   100円(税込み)

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 ユダヤ教から卵生したキリスト教を、ユダヤ主義者や異教徒と厳しく対決しながらローマ帝国に教線をひろげていった聖パウロを中心に、新約聖書記述者のルカやマルコをはじめとする伝道者たちの信仰を描く。
   280円(税込み)

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 明治二十三年春三十九歳で来日し、五十九歳で亡くなるまで日本を離れず、「知られざる日本の面影」「霊の日本」「神國日本」などをあらわして日本を西欧に紹介した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の評伝小説。
    100円(税込み)

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僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
近代日本の芸術における過剰な商業主義への光太郎の生真面目な抗議は、
美しい日本の良心と言えるだろう。
日本近代詩の父、高村光太郎の生涯!
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酒盛正全詩集
作品No.1より
雨。かってこれほど充実した一日はなかった。夕闇と
ともに空は明るみ、疲労が私を襲った。野の道の地蔵の
前に私は屈みこみ、しきりに自由とか孤独とかいうことを
考えた。濡れた雨傘は鉄鉢を持つ地蔵の腕にたてかけて
あった。夜が迫りつつあった。
   100円(税込み)

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かく歩み、かく思い、かく書く。文学日記より拾った鳥道の粋藻。小説が生まれる前の素描。文学日記セレクション
   240円(税込み)

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2021年7月9日 自分の愚かさとの折り合い。

 二百三十一枚。今日は午後二回目のワクチン接種で出かけるので、仕事は午前中だけ。一昨日注文した逆引きの古語辞典が今日届く。用例と時代区分がある古語辞典と併用して実用に堪えるか、現物をたしかめなければならない。日々、弛まずに書く。

 

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2021年7月7日 砂漠のカメレオンを見て吾が如しと思う。

 二百三十枚。梅原猛の「塔」で聖徳太子の仏教精神に触れて、「精神史のおもしろさは、一つの精神の発展が、一人の人間を通じて実現されるところにある。その人間がその思想を採用したのは偶然かもしれない。しかし、その偶然を通じて、一つの思想は、一つの世界の一つの時代を支配するようになる」とあった。しかし、そもそも人間の精神はその本然の社会性に依る。社会性は人間の属性ではなく人間のもっとも本質的な本性であって、その社会性が個人と社会の相関において思想を生むというのが正しい。この一点をおさえておかないと、歴史と個人の精神の関係が偶然性に満ちた怪異なものになる。そういうホラー小説は書きたくない。

 

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2021年7月5日 わずかばかりの才覚に頼って生きしのぐ。

 二百二十九枚。真夜中に刀を口にくわえて深い海に潜るようなもの思いに耽って寝付かれなかった。額田部太后と馬子の関係に関するメモが二十枚ほど残って、そのメモを頼りに今日の書きものをする。闇の中でHBの鉛筆で書いたよく読めないメモを見ていると心細いが、歴史の中の人間の実存にたどりつく鳥道のような標で、それがなくては私が書くべき小説が書けない。私は私小説を書かないので、そういう方法で登場人物の実存を探って書く。

 

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2021年7月3日 雨中遅筆

 二百二十六枚。五章の三分の一書き終える。崇峻暗殺、押坂彦人大兄の死と謎の多い事柄が続く。今読んでいる「太平記」のように書ければいいのだがと思いながら我流でゆっくりと書きすすんでいる。ここ数日雨が降り続いていて、今日も今朝から雨音が絶えない。雨粒の音を聞き分けるような思索。

 

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2021年7月1日 日々耕せる畑に囲まれてありたれば不足なし。

 二百二十五枚。馬子によって徹底的に疎外されている押坂彦人大兄の心境を書いて、その下書き二枚半ほどを今日これから本書きして五章の三分の一を書き終える。狙い澄まして振り下ろした刀の刃筋がぶれて、そのぶれを修正するのにひと苦労する。毎日その繰り返しで、みごとに書き切ったというような達成感はあまりない。強いて言えば、そんなことを何十年繰り返していると多少文章が練れてきて、手許が強くなるのが実感できる。しかしそれは文学とか芸術と言ったものとは関係がない職能としての技倆で自慢できるようなことではない。田植えをしている農民が「お上手ですね」と言われても答えようがないのと同じだ。

 

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2021年6月29日 思考は螺旋。

 二百二十四枚。物部討伐以降しばらく落ち着いていた世情が、在位三年目の崇峻が突然任那復興を詔して騒然となる。崇峻がなぜこの時期にどのような目算があって任那復興を言い出したのか、正直なところわからない。推測できるいくつかの理由が絡み合っているからではなく、その絡みがどこか緩くて蓋然性が感じられないからだ。その蓋然性のなさが歴史というものの実存的ありようとそぐわないように思われる。その推理を口実にゆっくりと書く。書くというのは考えることと同義。

 

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