古田十駕(酒盛正)の文学日記

古田十駕の文学日記

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2023年1月31日 世間なき無垢は嫌にて候。

残二十枚。十年以上行方知れずだった福利が、唐で受戒して医学も修めた恵日という僧となって、新羅から帰国した倭使の吉士磐金らとともに帰ってきて突然馬子の前にあらわれる。馬子の死まであと三、四枚。歴史小説であつかう人間はみな世間に晒し梳かれてい…

2023年1月29日 

残二十二枚。吉士磐金と吉士倉下が任那へおもむいて新羅と和議をととのえたところへ倭軍の兵船が半島南岸のおそらく馬山あたりの沖へ襲来する。せっかくととのっていた和議が破れ吉士らとともに倭へいくことになって津まで来ていた新羅と任那の朝貢使もいっ…

2023年1月27日 月も雲間なきは嫌にて候 珠光

残二十四枚。「紀」の推古三十一年条の解釈がむずかしい。もともと記述が何らかの理由で混乱しているらしく、その何らかを究明することで飛鳥という時代の大和王朝と馬子という政治家のありようがわかってくるように思える。その究明の端が馬子の死とかさな…

2023年1月25日 果報は寝て待つ。

残二十六枚。最終章半分書き終え。追い込みに入ってややペースが上がる。手許で扱う資料が減り、ややこしい上代語をつかうところが少なくなって書きやすくなった。今やっている推敲が追いついてきて、書いたあとすぐの手直し的な推敲と変わらなくなっている…

2023年1月23日 わが方丈は天川仰ぐ天涯の縁

太子薨去から推古崩御までを三十三枚で書く予定で書いていて、残り二十九枚で全六百枚の作品が完結する。そのあと推敲に半年かけて仕上げる。推敲をするとたいがい一、二割つまる見当なので、稿枚数五百二、三十枚くらいになるか。五十一歳のときにはじめて…

2023年1月21日 大寒にウクライナの塹壕を思えば冬日麗し。

残三十一枚。馬子主導の半島外交へ筆をうつす前に、岡本宮にいる刀自古妃のことを今日一日で書く。物部守屋の娘とも馬子の庶子とも言われる刀自古妃のこの時期の立場は微妙で、そこをおさえると馬子の意志が見えてくる。あと十四枚ほどで馬子の死まで書く予…

2023年1月19日 千里歩まんに一日疎かならず。

残三十二枚。太子を弑したあと、馬子は太子一族の悲嘆を傍観しつつ有力朝臣たちの動静を見守る。山背大兄王が太子の姿を模す釈迦三尊像をつくることを発願し、橘妃が太子の天寿国往生を願って餓虎投身捨身捨命の菩薩行を図にした繍帳をつくることを願う。こ…

2023年1月17日 背中の後ろは消える。

残三十三枚。推古の使いとして阿倍内麻呂と境部摩理勢が斑鳩宮へ遣わされたときの喪明けの太子一族の様子を今日書く。境部摩理勢は馬子の弟で、つまり馬子の使いでもある。境部摩理勢はこののち太子一族と蘇我との権力抗争の中で重要な役回りを担うようにな…

2023年1月15日 目覚めている自覚と夢の意識の自覚。

残り三十四枚。太子が磯長陵墓に穴穂部間人前太后と膳部妃とともに合葬されたあとの推古と馬子を中心にした朝廷のうごきにかかる。太子薨去の四年後に馬子が薨じるまでを十数枚で書く。歴史小説は登場人物の精神を書かない。歴史の中の人物と社会の絡みを書…

2023年1月13日 上下左右前後心中無外

残り三十五枚。太子と菩岐岐美妃が薨ったあとの推古と馬子の関係へ筆をうつす。最後の後片付けのようになって筆が惰性に流れないよう心する。ここで一度刀を研ぎ直すくらいの心掛けが欲しいのだが、それほどの余裕はない。一日半枚ペースであと七十日。最後…

2023年1月11日 目の前と空だけ見つつカタツムリ

残り三十六枚。太子と菩岐岐美妃がようやく薨じる。今日、最終章の三分の一を書き終える。残り三分の二で馬子の薨去と推古が崩御するまでの七年間を書く。三月いっぱいで書き終える予定だが、少し四月に入るかも知れない。とにかく急がない。筆が浮くとろく…

2023年1月9日 カタツムリが見る月は

残り三十七枚。太子未だ薨ぜず。謀殺四日前まで書き終える。「新田義貞」「日本中世への視座」を読み出す。昼間は今書いている飛鳥時代推古朝、夜は次作の中世南北朝のことを考えると決めている。昨晩NHKの大河ドラマが始まったのを見て、面白かったのでヘラ…

2023年1月7日 カタツムリの処世

残り三十八枚。今日も前三枚への挿入と書き直し。太子殺害に四苦八苦。挿入は直接太子殺害に手を汚す菩岐岐美妃の人となりについて。人物像が伝説化している人間を描くのはむずかしい。蓋然的に書こうとすればするほど読者の持っているその人物の人物像を裏…

2023年1月5日 伊達巻きが高野豆腐にのる四日目

残り三十九枚。久しぶりに匍匐進退。あと四、五枚で太子が薨る。私自身が太子を殺すつもりになって書いた。それほど太子の殺害はむずかしい。そのむずかしさが憶断の確信につながる。何しろふた月のあいだに太子の母と太子と菩岐岐美妃が身罷り、しかも太子…

2023年1月3日 謹賀新年

残り四十枚。元旦に太子薨去まで書くつもりだったが、その前段を何度も書き直して、そこまで書き切れなかった。それでも何とか一日半枚のペースは維持している。そのぶんリアルが濃くなる。あとは推敲に任せる。 酒盛正の電子書籍 ↓ ↓ ↓ ↓ (表紙画像をクリッ…