古田十駕(酒盛正)の文学日記

古田十駕の文学日記

2022年12月5日 面白いかどうかというより大切なこと。

五百四十三枚。捨身飼虎の話は説話では太子が橘大郎妃に話したことになっているが、そうだとは妃が太子の死後に太子を偲ぶ刺繍を織らせることを乞うときに推古へ話したことで、そういう話は話の周辺部分が変形していることが多いので、太子が直接話したのか…

2022年12月3日 蓋然的必要性の中にある無意味。

五百四十一枚。太子、山背大兄王と馬子、蝦夷の血の資質を双方の仏教への姿勢の違いに拠って対比させて書く。入鹿のことも触れようと思ったが、ここでは煩瑣にならない程度にしか書かないことにした。創作ノートの空白のところに書くべきことが山のようにあ…

2022年12月1日 資料の本とそれを入れる家と気晴らしの小さな庭。

五百三十九枚。ここではじめて山背大兄王ら十人の太子の子のことに触れる。彼らは太子が薨った二十一年後に入鹿に攻められて皆亡くなるのだが、そこまで書こうとするとあと二百枚くらい必要。気力がないのと、推古、太子、馬子の三人の死まで書けばいちおう…

2022年11月29日 文章のリアルという反リアルの闇。

五百三十八枚。膳部は蘇我の縁族で、菩岐岐美郎女が太子の夫人になったのは野辺で花摘みをしている彼女を太子が見そめたからだという文芸的なことではない。崇峻が大伴の女を嬪にしたのをゆるさなかった馬子が、太子が他族の女を妃とすることをゆるすはずが…

2022年11月27日 神は仏か幻か。

五百三十七枚。推古、太子、馬子の鼎の心理を今日、明日で書き終える。あと六十四枚で完結。どこまで書くかいちおう見切りをつけたので肩が軽くなって書きやすくなる。書き終えるのは三月か四月。そのあと推敲に半年。出来不出来は推敲が済むまで不明。どう…

2022年11月25日 桃色の巾着帽を被り白い袷を着た子どものような背丈の老婆を見る。

五百三十六枚。「南北朝」読み終え、「北朝の天皇」を読み始める。どちらも新書版なので読みやすい。「梅松論」は一日一頁のペース。書くほうはいつものペース。ここひと月ほど体調不調が続き、目の前のやるべきことをやっているという感じ。ながい期間にわ…

2022年11月23日 腸を掻き出し首を切り落として切り身にしようか煮ようか焙ろうか。

五百三十五枚。推古二十八年の欽明陵改修まで書き終える。二年後の太子と膳部菩岐岐美妃の死までが十一章。次作の資料「梅松論」読み始める。このころに現代の日本語の文法の基礎が完成したようで、活字ならほぼ原文で読める。原文が漢文白文の綸旨、起請文…

2022年11月21日 心中十方無尽 不惜身命 唯偲青雲

五百三十四枚。十一章の三分の二の後尾に一枚加筆。次作の資料として読んでいる「改稿 足利尊氏」読了。続いて「梅松論」を今夜から読み出す。資料は午後一作、夜一作、まだノートをとらずに読み継いでいる。南北朝の通史と後醍醐天皇関係はもう何冊かずつ読…

2022年11月19日 今し世の八十億人の賑やかさ

五百三十三枚。推古と馬子の会話が予定より一枚つまって十一章の三分の二を書き終える。一行の空行をおいて太子と馬子の緊張関係を書き出す。太子も馬子も武人ではないので戦闘場面はない。推古二十八年に太子と馬子がともに議して天皇記、国記、臣連伴造国…

2022年11月17日 思わずば書くは易しかペンと紙だけ

五百三十二枚。ここ数日、手探りで書き継いだ四、五枚を大胆に組換え、その前後の摺り合わせの手を入れる。言葉がその意味するところを変えずに表情を変える。そのうえで、あと二枚書き継ぐ。それで十一章の三分の二を書き終える。雨激しければ土洗う。 酒盛…

2022年11月15日 まっすぐまがる。

五百三十枚。あと三枚で十一章の三分の二書き終え。そこまで手探り書きが続く。ここが主題の頭頂にあたる。推敲四百枚終える。八章で「十七条」を全文載せてあるのを全部削るかそのままにしておくか決められない。「十七条」は太子の政治の肝なのだが、小説…

2022年11月13日 魂のるというもさらなり秋の雲

五百二十九枚。推古と馬子が太子家のことで話すところを今日書くつもりで、一昨昨日に箇条書きのメモをつくっておいたのが、昨日あらためて見ると、まるで何のことか主旨が辿れない。今日はその謎解きから始める。自分で書いたことだから何とかなる。メモの…

2022年11月11日 鵺鳴ける一夜の怪しそ怪し

五百二十八枚。昨日は手島王女が生まれるところまで書き、今日からその手島王女をいずれ入鹿の妃にして(入鹿が婿になる)その王子を推古のあと王位に就く厩戸王のあとの日継ぎの太子とすることについて推古と馬子が話し合うところを書く。太子と馬子の水面下…

2022年11月9日 うしろから見て心知る

五百二十六枚。随の滅亡と三韓の動静のところを書き、一晩いろいろと再考するに、どうも違うなという気がして、今日書き直しする。こういう書くことによって気づく不首尾はあってしかるべき健全なことだとおもっているのであまり苦にならない。むしろ自分の…

2022年11月7日 陋屋の南天二本紅葉す

五百二十五枚。十一章半分書き終える。随滅亡後の三韓と倭の動静。太子の三教義疏の著述。そのあと太子と馬子が共同で企画した天皇記、国記の選録について書く。この企画で太子は国のあり方と王統の正統を明らかにしようと考え、馬子は蘇我の系譜を神授の王…

2022年11月5日 神住める雲間にのぞく朱雲の峰

五百二十四枚。大業十四年三月に煬帝が寵臣に縊殺されて隋が滅ぶところまで書く。このころ倭国では平和裡に蘇我政権の独裁化がすすみ、馬子がひそかに王権を窺うようになる。太子は対隋外交の失敗の責任をとらされるかたちで政権中枢から外され、斑鳩宮に籠…

2022年11月3日 困難を買って出る実存主義の宿痾。

五百二十二枚。推古二十四年の百済と新羅の母山城の攻防まで書く。百済と新羅は伽羅の帰属をめぐってなが年争っていて、争いがある都度双方から倭国の与力や中立を求めて使者が来朝した。このときも七月に新羅の使者が二尺の金銅仏を貢上したと「紀」にある…

2022年11月1日 木の葉隠れに去る秋そ山辺

五百二十一枚。一昨日、白髪部王のことを書き、その追加を昨日書いたが、今朝になるとその追加部分が蛇足になって消えてしまった。昨日はひどく疲れていたので書くほうもうまくいかなかった。季節の変わり目毎にそういう日が一日くらいある。そういう日もい…

2022年10月30日 人間が売りもの買いものの世をわたる

五百二十枚。太子の正妃となった橘大郎女が男児を産み、白髪部王となる。白髪部というのは雄略天皇が子の白髪王のためにもうけた名代で、その白髪王が清寧天皇となったが、子がなかったので白髪の名を後世にとどめるため子代として諸国においたものだった。…

2022年10月28日 へのへのもへのと書く秋の空

五百十八枚。十一章の三分の一を終えたあとも太子と馬子の関係の暗転の憶測が続く。双方に表立ったうごきがないこの部分をあえて活劇ふうに書くと質量のない紙細工のようになるので前段に引き続きその関係性の変質を双方の思惑を憶測するかたちで書きすすむ…

2022年10月26日 秋深し飛鳥の都の探偵そ

五百十七枚。十一章の三分の一書き終える。このあとは太子のストレスが溜まる一方で、五年後の推古三十年に太子と膳夫人がともに身罷る。二人が突然死ぬので毒殺説があり、犯人が誰か諸説あるが、もし毒殺なら黒幕は馬子しかなく、馬子が誰かを指嗾し、その…

2022年10月24日 アケビコノハを指で突くてふ秋の怪談

五百十六枚。飢えてゆき倒れた旅人に太子が着ている衣服を与えるという有名な片岡伝説をあえて書かないでおいたが、菟道貝蛸妃の死によって太子と馬子の関係が変容してくるところまで書いて、この伝説が太子と馬子の対立構図を端的にあらわしていることに気…

2022年10月22日 人間は人間が思う以上に合理的で整合性のある生き方をする。

五百十五枚。曇り。今日、百済使と馬子の密談に続き馬子と蝦夷の関係性を書いて、明日、慧慈が高句麗へ帰国するところを書く。太子の権威を守っている外堀が徐々に埋められていく。小説は実生活と違って一行で時間が移る。しかしその間に小説の登場人物たち…

2022年10月20日 日々歩くわが道果つる秋の奥

五百十四枚。この章を今年中に書き上げたいのだが、思うように書きすゝまない。天気がはっきりせず書くほうも捗らない秋の日は深い峡谷へ傾いている丘の斜面を下っていくような気分になる。妙に澄んだ心持ちだが、歩いて下れるが、上って戻ることのできない…

2022年10月18日 わが神は情なり。

五百十三枚。隋の国情を探ってきた遣隋使が百済の使いをともなって七月に帰朝。馬子の邸で密談。すでに太子は朝庭の中枢から外されている。太子の師だった高句麗僧慧慈もこの年の十一月に祖国に帰国する。こうして太子の権力の鎧が一枚々々剥がされていく。…

2022年10月16日 生き延びているという感じ。

五百十二枚。書くときに変に技をかけると、あとで推敲のときにそのあざとさが鼻について到って苦労する羽目になる。わかっていてそれでも繰り返すのは、その動機にそれなりの理由があるからだろう。それがはからず書き手の態度についての自戒ともなるのでこ…

2022年10月14日 三冊の本持ち重る秋

五百十一枚。定期健康診断とインフルエンザワクチン接種で昨日一日潰れる。隋の三回目の高句麗遠征の最中の推古二十二年夏に第三次遣隋船が百済経由で派遣される。前の二回の遣隋使は太子が隋との国交をひらくために出したが、このときは馬子が隋の国情を探…

2022年10月12日 「それはどういうことだ?」とソクラテスは問い続けた。

五百十枚。太子と馬子の関係が暗転するところを何とか書いたが、あまりきつかったので、毎日冒頭から数枚ずつやって三百枚ちょっとやり終えている推敲を一昨日、一昨昨日とするのを忘れていることに昨日気づいた。昨日二枚半ほどやったが、目が泳いでいるよ…

2022年10月10日 実存的絶好調。

五百九枚。目の前を捌くのに青息吐息なのだが、この状況は実存的にはわるくない。書くという行為とその思考の関係性に緩みやズレがないから青息吐息になる。しかし苦しいことには違いなく、肩が凝る。一昨日、古書市へ行って買った本を肩掛けのバックに入れ…

2022年10月8日 卜伝が刀忘れて無刀取り

五百八枚。昨日書いたところの一部にちょっと迷いがあって、今日その部分を書き直し。午後は出かけるので午前中にやる。あとのことはそれを終えてから考える。小説を予定調和にしない。かと言って奇想天外を求めるわけではなく、人間の存在の状況を予断なく…