古田十駕(酒盛正)の文学日記

古田十駕の文学日記

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2023年9月30日 月見ればとまる心

二十七枚半。「土」の末尾に(昭和四十三年六月~十二月)とあって、ほぼ六ヶ月で書かれたことがわかるが、するとこの作品はひと月百枚くらいのペースで書かれたことになる。一日三枚以上、少し弱ってきた自覚のある心臓がドキドキするほどのおどろくべきペー…

2023年9月26日 またこんな人間の物語

二十五枚半。越智舘への攻撃を書き始める。正成に天才的な軍略の才があるわけではなく、悪党の実践的な才覚があるだけだということをおさえて書く。のちには勤王の志に目覚めて武士としての自覚がともなうようになるが、元享二年のこのころにはかなりあくど…

2023年9月26日 歴史の亜リアリズム。

二十四枚半。倒幕の思案を深める後醍醐天皇の夢枕に河内の楠木正成という武士が立ったというような話はまったく荒唐無稽でそれこそ話にもならないので、二人を結びつけるお膳立てをするのにいちばん蓋然性がある蔵人右少弁俊基の仮の姿として、渡辺党討伐の…

2023年9月24日 空気、水、熱、実存。

二十三枚。楠木の系譜には女のことがほとんどなく、正成の母や妻のことが皆目わからない。系譜を研究するときに母親や妻の出自が辿られればその社会的ポジションから多くのことがわかってくると思えるのだが、諸本、端からそれを諦めていて、後世に贋作され…

2023年9月22日 オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ

二十二枚。貝吹山に詰城を持ち、その麓に二つの馬塲があって三方を丘、ひらいた一方が濠で囲まれた舘をかまえていた越智氏の兵力はどれほどのものだったのか。越智荘一荘の当知行で養える兵力など知れたもので、いろいろと計算の仕方があるが、せいぜい百人…

2023年9月20日 そのように描いたのでもそのように描けたのでもない。

二十枚半。今朝起きたときふと、湯浅勢との戦いのところの細部の描写を一、二行加筆しておきたいとおもった。具体的な案があるわけではなく、描写の不足を自覚したわけでもなく、筋立てにかかわる不可欠な記述の書きこぼしがあるともおもえない。何か霧の中…

2023年9月18日 日本文学の崖。

十九枚半。湯浅党討伐のところへ一枚半挿入する。もういちど冒頭から目をとおして加筆の要があれば加筆してから、できれば今日から越智討伐にかかる。創作ノートをつくっているときは足利尊氏からの視点を軸にして五年くらいかけて書くつもりだったが、本稿…

2023年9月16日 うちうちでひろげる大風呂敷。

十八枚。湯浅党討伐を書き終える。空行をおいてから戦後処置に短く触れて次ぎの越智討伐へむかわせる。まだ創作ノートの一頁目にも入っていないので血腥い描写は避けた。そんなシーンはあとでいくらでも出てくる。中世において近代日本社会の原型があらまし…

2023年9月14日 年輪が周密な木を柱にする。

十七枚。あと二枚ほど湯浅討伐の実戦部分の下書きを書いてあるが、どうもしっくりしない。たぶんちょっと前まで戻って書きあらためることになる。ペースのことはおいて腰を落ち着けて書きたい。まだ冒頭を書き始めたばかりで先がながいのに、こんなことで大…

2023年9月12日 藪を突いて蛇を出す。

十五枚。高野山と湯浅氏のあいだで相論のある阿弖川(あてがわ)荘押領のため安田庄へむかうところまでいちど書いたところを半分以上書き直して書き終える。今日は安田庄を救援にきた湯浅一族との戦いを書く。柔道の乱取りのような書き方になってきた。地図で…

2023年9月10日 登山隊の目的は何か。

十四枚。すでに御家人としての身分を持っている湯浅氏と越智氏を六波羅探題の要請で討つ以上、正成も朝廷なり幕府にそれなりの地位をえていなければならず、それならば正成が兵衛となったのが後醍醐天皇の倒幕に参陣したときだという説は成り立たず、湯浅、…

2023年9月8日 うじゃうじゃ。

十二枚。ただし、摂津の渡辺党、紀伊の湯浅氏、大和の越智氏討伐の命を六波羅からうけるについての楠木の素性に関しての説明のような挿入が一枚ぶんあって、もしかしたらこれを早々に削るなり書き直すなりしなければならないので、あまり書きすすんでいない…

2023年9月6日 シンプルな道具の多様な有効性。

十枚。物語の本筋の前段で早くも挿入が入り出し、予定したところまでは書きすすめなかったが、余計なことを書いている感じがしないのであまり気にならない。内容を云々する段階ではないということもある。過ぎたるは及ばざる如しとか、足りざるはなきに等し…

2023年9月4日 シテを書く楽しさ。

八枚。昨夜から雨。朝方、空調を使わず窓を開けて湿った空気をとおす。息が楽な気がする。正遠から家督を継いだ正俊が病で急逝し、子の正氏が跡目をとるにあたって叔父の正成が後見となるところまで書く。これが元享元年のことで、翌年、六波羅探題から摂津…

2023年9月2日 一日一枚毎に秋めくか

六枚。今夏はほんとうに暑かったので秋のおとずれが待ち遠しい。週二回、晩飯前に呑むコップ一杯の焼酎が少し夏バテ気味の体によく利く。書き始めたばかりの小説はまずまずの立ちあがり。これまでこういうことはあまりなかったことで多少気味がわるい。実存…